私が、人は「目に見えないもの」によって、人生を阻害されうると思い始めたのは、弟のことがあってからだ。
弟は学生時代に独学で宅建を取り、不動産会社に就職した。
通常、宅建の資格は会社に就職後に取得することが多いらしいが、弟は学生の頃から不動産業界で働くことを決めていたので、学生のうちに所得し、期待の新人として会社の1番売り手の地区に配属された。
しかし、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月経っても契約が取れない。同期たちもビギナーズラックのもとに少しづつ契約が取れていく中で、弟だけが一件も契約が取れないまま、半年が経った。
久しぶりに弟と会って食事をした時、弟はかなり憔悴していた。
ストレスで抜け毛も増え、眠れないからといって、お酒が苦手なのに、毎晩ウイスキーをストレートで飲んでいると話していた。
ところで、話の途中に突然で恐縮だが、私はある時から、人についている「目に見えないもの」を感じ取れる身体になった。もちろん、いわゆる霊能者のような「視覚的に見える」わけではない。例えば、「この人の後ろには妖怪なるものがついている」という前提を言葉でイメージして、その人を見ると、筋肉反応として身体が震えるのである。いわば、レーダーのようなものなのだと思う。
なぜそんな身体になったのかの説明は別でするとして、とにかく私は弟の後ろに「妖怪なるもの」がいないのかを見ることにした。すると、身体に大きく反応が出てしまった。
これはまずいと思い、その翌日、私は恩師のもとに行った。
この恩師というのも別で紹介するとして、とにかく、私のレーダーのような身体を伝授してくれた人なのである。
私 「弟の後ろに妖怪がついている気がするんですけど、どうですか…?(弟の写真を見せながら)」
恩師 「おおーっ、(身体を震わせながら)確かに後ろに大きいものがついているね。可哀想に、、、」
私. 「彼、仕事がうまくいかなくて困っているみたいなんですけど、これって取れますかね?」
恩師「うーん、僕一人だと力が足りないから難しいけど、君と二人ならできるかも。ちょっと待ってね」
恩師はおもむろにパソコンのデスクトップの前に座り、Googleを立ち上げ、検索し始める。
恩師「僕の高校時代の友人がね。エロ雑誌ばっかり作ってた男なんだけど、今は住職をやっててね。彼のお寺には「身代わり地蔵」と呼ばれる地蔵があって、昔それを見た時、いやなものがべーっとり付いている気がしたの。だから、もうそれにくっつけちゃおう!」
私「くっつけるなんてできるんですか?」
恩師「できるよー!でも、あれだなあ。。直接我々を経由するのはよくないから。一度、何かを経由させた方がいいね。そうだ!あの水晶にしよう!」
身軽な恩師はトコトコと部屋にある水晶を取ってきて、Googleの画像検索内で「身代わり地蔵」が表示されたデスクトップ前に座る。
つまり説明すると(説明になっているのかわからないけど)、
- デスクトップ上の弟の写真に映る「妖怪」!
- その「妖怪」を水晶に移動!!
- 水晶に移動した「妖怪」を、デスクトップの「身代わり地蔵」に移動!!!
この手順で、弟から「妖怪」を取ろうという流れである。
もはや全てがリモート作業だが、私は取れればそれで良いので、恩師と一緒に取り組むことにした。
この作業で私が意識したことは、弟の写真から妖怪を感じた時の感触を頼りに、その感触を引き連れながら、目の前の水晶にパイプを繋ぎ、妖怪を移行させるイメージで手招きをすることだった。(手招きをすることで、より自分の中で、イメージの具現化ができる気がした)
ある程度、妖怪の感触がなくなってきたら、水晶を見つめ「この水晶には弟についていた妖怪が入っている」という前提で見る。そうすると、身体に強く筋肉反応が出たので上手くいっている気がした。その要領で、水晶から「身代わり地蔵」に移行を試みる。
その移行中、恩師は「ううっ!ううっ!」と呻いていた。
恩師「呻いているでしょう、、、!これはね、妖怪の、、ううっ!呻きなんだよ!」
ここまでの作業を受け入れている私は、もう何も驚かない。
そう言うのならそうなんだと思い、妖怪の感触がなくなるまで、移行の作業を5〜10分ほど続けた。感触がなくなったので、二人とも作業を止めて落ち着いていると、驚くべきことが起こった。突如、弟からメールが来たのである。
「アニキ、おれに何かした??身体が軽いんだけど」
恩師と私は驚き、すぐに電話をした。
とにかくついていると思われるものは取れたから、自分が言ったことについては安心してほしい。けれど、これはカタチのない話だから、こちらがやったことはおまじないのようなものだと思う。でもうまくいくといいね、頑張って伝えた。
すると、さらに驚くことがあった。
なんと、その翌日立ち会った案件で、弟は見事、契約を取ってきたのである。
自分で書きながら全てがマンガのような話だと思うが、マンガのような話なのだから仕方がない。しかし、そんな不思議に満ちた世界だからこそ、その不思議さの切れ端をもとにした想像力で描かれたのが、マンガではないのか、とも思う。弟はそれから元々あった実力に見合った結果を出し続け、今は最年少で支店長になったり、着々と自身の道を歩んでいる。
今思えば、自分が言葉でつかまえた「妖怪なるもの」は、生命の働きを阻害する何かだったのかなと思う。弟のもっている生命の働きを阻害するもの。それが妖怪だったのか。そういえば、弟はどこでその妖怪をつけてきてしまったのか。事故物件などでつけてきてしまったのか。
あれから、弟は自身の感度が上がってしまったのか、事故物件に訪れると、何か「イヤな感じ」を感知してしまう身体になってしまったらしい。そんな弟と電話した時、事故物件についてこんな風に話していたことを思い出す。
「アニキ、事故物件はね、なんか”時間が止まっている”んだよ。そう感じるんだ」